新潟の「ゆか里」→「浮き星」SNSで広がる
新潟に、もち米に砂糖蜜をかけた「ゆか里」という郷土菓子がある。唯一製造していた老舗菓子店は職人が高齢化し、存続が危ぶまれていたが、パッケージを変えて「浮き星」の名で売り出すと、SNSで大きく拡散。若者を中心に、注文が殺到し始めた。
「ゆか里」を製造してきたのは、1900年創業の「明治屋」(新潟市中央区)。新潟の人々は、金平糖のようなゆか里をお湯に浮かべ、茶飲み感覚で愛してきた。
ただ、作るのは1.5メートルの回転釜を7時間以上かき混ぜ続ける重労働。売れ行きが落ち込み、職人で明治屋代表の小林幹生さん(79)は「体が言うことを聞かなくなったら廃業しよう」と考えていた。
ところが、ゆか里に目を付けた人がいた。新潟市のデザイン会社「ヒッコリースリートラベラーズ」の迫一成さん(38)。
「パッケージを変えれば売れる」。小林さんの了承を得て、従来のデザインを改めておしゃれな透明のパッケージに。黄色のゆず味、緑色の抹茶味など、彩りが際だつようにした。雪国新潟をイメージした雪だるまを描いた丸い缶入りの商品もつくった。
名前も、「浮き星」に変えた。2015年冬、展示会で披露すると、全国から大口の注文が相次いだ。若者を中心にSNSでも拡散。インスタグラムには現在、浮き星のハッシュタグで約1千件の投稿がある。アイスやヨーグルトにトッピングするなど、さまざまな画像がアップされている。
作り方や形は、100年前から変わっていない。なのに、菓子の生産量は10倍に増え、今年は約10万個が売れる見通しだ。
迫さんは「技術やこだわりを残しながら時代を意識する。デザインのサポートで古い物を見直せる」と胸を張る。
大ヒットを受け、明治屋は小林さんの娘夫婦が手伝うようになった。後継ぎとなったのは娘の夫、川崎明広さん(49)は「色んな形で応用してくれる人がいる。知恵をもらいながら、広く世の中に残していきたい」と話している。