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2017.09.08更新

大切な命気付けた

「消えて」一度は思ったけど

 

 親が育てられない子どもを匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)が、熊本市の慈恵病院に開設されて10年になる。昨年3月末までに125人が預けられた。

 幼稚園に通う男の子が母親と手をつなぎ歩く。笑顔で、池を見ては「コイがいる!」。20代の母親は「かわいいですよ」と頭をなでる。

 「消えてなくなれ」。一度はそう思った命だった。周りに打ち明けられずに一人で産んだ後、「ゆりかご」に託した。

 妊娠したのは、地元の九州を離れ、中部地方の看護の専門学校に通っていた10代の時。交際していない男性と1回だけ性交した。生理が来ない。検査薬で調べると陽性だった。「どうしよう・・・」。中絶も考えたが、ずるずると日が過ぎた。「逃げてましたね」と当時を振り返る。

 おなかはどんどん膨らむ。学校にばれれば、退学になるかもしれず、ひた隠しにした。「生理来てる?」と心配する人には、「太りました」とうそをついた。

 「流れないかな」。おなかに重い物を入れたバッグを落とした。「このまま誰にも気づかれずにすめば」。だが、命は強かった。

 ある日、急におなかが痛くなった。学校の寮の部屋でひとりうめき続け、男の子をトイレで産んだ。「めちゃ、かわいい」。おっぱいをあげ、一緒に風呂に入った。

 ちょうど父から実家に帰ってくるように言われていた。「連れて帰れない」。悩んでいる時、テレビなどで話題となっていた「赤ちゃんポスト」をふと思い出した。父にはごまかして新幹線に乗った。熊本駅で初めて赤ちゃんの写真を撮った。タクシーに乗ると運転手が言った。「かわいいですね」。別れを前にし、悲しかった。が、預けるしか選択肢はなかった。

 病棟外側の扉を開け、赤ちゃんを置き、帰ろうとした。その時、病院の女性が声をかけてきた。寄り添って話を聞いてくれる女性の胸で泣いた。「どうしたいの?」と聞かれ、初めて思いを口にした。「働くようになったら引き取りたい」

 男の子はいま、母親の地元の児童養護施設で生活している。母親は働きながら、月に1、2回ほど会いに行く。小学校に上がるまでには引き取るつもりだ。「(息子の命が)なかったことにならなかったら、いま幸せ」と語る母親。いずれ、息子にはすべてを隠さず伝えるつもりだ。「うそはつきません。本当に大好きだから」

投稿者: 松村税務会計事務所

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