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2016.05.06更新

規模縮小の空きスペース利用し音楽会

 東京下町の町工場の中に、小さなコンサートホールがある。不況で一時は倒産の危機にひんし、機械を処分せざるを得なかったが、その後社長が経営を立て直して空いたスペースをコンサートホールとしてよみがえらせた。ものづくりの金属音に代わって工場には月に一度、クラシックの調べが響きわたる。

葛飾で月1回

 東京都葛飾区の金属加工業「宏栄工業」=高橋元子社長(63)、従業員3人。創業50年余り。金属製品の表面加工が専門で窓枠やエアコンの吹き出し口など鉄道車両の部品加工や医療機器のメッキ加工を請け負ってきた。最盛期には20人を超える従業員がいて、工場は活気があった
 しかし、バブル崩壊後の不況で取引先に倒産や業務縮小が続き、そのあおりで10年ほど前には借金がふくらみ倒産の危機に。従業員を減らしてリストラし、何とか乗り切った。高橋社長は「工場をたたむにしてもお金がかかるので、たためなかった」と振り返る。
 3年前には取引先の中国移転に伴い、メッキ加工から撤退。工場の機械を処分したため2階に大きな空間ができた。
 東京音大を卒業し、ピアニストになった長女ドレミさん(26)の影響で、クラシック音楽鑑賞が趣味になっていた高橋社長。空間活用策に考えを巡らしていて「正装でなく、普段着のまま近所の人たちや町工場の職人が楽しめるコンサートホール」を考えついた。
 企業が別の事業に乗り出す場合に支給される中小企業庁の「第二創業促進補助金」500万円を受け、2014年11月に工場の2階約50平方メートルを40人収容のコンサートホールに改造。新たにピアノを購入し防音壁、トイレも整備して2000万円近くかかったという。15年3月からドレミさんを中心に一流の音楽家を招き、格安のクラシックコンサートを毎月第二土曜日に開催している。
 高橋社長は「仕事が多忙でもクラシックが癒してくれた。近所の人たちにも音楽のすばらしさを楽しんでほしかった」と話し、ドレミさんは「工場をクラシック音楽の拠点にできたら」と夢をふくらませる。
 さきごろ、昨年の日本音楽コンクール(毎日新聞社など主催)クラリネット部門1位のハンガリー人奏者、コハーン・イシュトバーン氏が出演。
問い合わせは同社ドレミファクトリー(03・3694・0585)。

投稿者: 松村税務会計事務所

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